
決して天気がいいわけではない。ベランダから見えるはずのはずのマウントハットは雲の中、裾野だけが見えている。天気予報も雨といっている。でも「まだ降っていない」さらに「どうせ濡れるんだし」という覚悟もある。何より僕を動かしたのは「メスベンにいられる時間は少ないんだ」という自分で引いた線へのこだわりだったのかもしれない。この地を離れる前に一度歩いておきたい場所、それは掲示板の地図で川の中を点線、つまりルートが引かれているコースだった。
今日から夏時間が始まり1時間繰り上がる。もうお昼になっていた。スタートは前回お散歩に来たアワアワラタ保護区の駐車場。意外やどうして、5,6台の車が止まっている。
12:30 お散歩の時と同じループトラックを上がっていく。マウントクックで教えてもらった植物達をここでも見る事ができて名前を繰り返しながら進んでいく。クックに比べたらこちらのほうが暖かいのだろう、ヒービー(
Hebe、もう少し特定するなら
Leathery
Leaved Mountain Hebe )が白い花をつけていた。30分登りが続くと
Scott
Saddle Track への分岐に来た。前回は左、今回はその
Scott
Saddle へ向かう。
13:25 ブッシュライン(森林限界)を越えて見とおしが利くようになり、さらに20分歩くとジャリ道のガレ場が始まった。地すべりの跡のようなジャリ斜面をトラバースしていく。あまり気持ちのいいものではない。雲の中に入り下界は消えてしまった。10人以上のパーティとすれ違う。
Scott
Saddle までのピストンだという。さらにランナー!に追い抜かれUターンしてきた彼にまた出会う。この道を走りつづけるのは、ちょっと・・・・・
14:00 Scott
Saddle についたがガスは濃くなり前後左右「白」、近くを走っているであろう車のエンジン音とグラベル道路を掻くタイヤの音だけがすぐ近くに聞こえる。マウントハットスキー場への道路に出ると車の姿を確認できた。上まで行けばガスを抜けるのだろうか。後でシェアメイトに確認したことだがスキー場まであがっても真っ白だったという。車道を少し登ると目指す沢コースを示す看板を発見、晴れていれば車道に出た時点で見つけられるだろうが今日はほとんど正面に来たところだった。これで安心して沢に向かって落ちていく。ところがこの道は
Track
のように整備されていない
Route なのでブッシュに道が覆われやぶこぎの様相、たちまち全身水滴で濡らされてしまった。かなり面白い。迷いそうな分岐もほどよく踏まれた草が残り正解がすぐにわかる。昨日勉強したところがテストに出た、ようなあの感覚。
14:55 沢に出た。まさかにこれは枝沢だろう。ここでルートは消える。沢をそのまま下りていくが随分と落差、傾斜がきつくなってきた。流された流木もたくさん横になって引っ掛かっている。人の歩いた気配がなさ過ぎるので高巻くことに方針転換、するとルートにぶつかった。沢に出てルートが消えたときに探すべきだった、失敗。
15:13 本流
Pudding
Hill Stream に出る。ガスよりは低いところまで下りてきたが逆に雨がしっかりと降っている。この後は河原沿いに歩くので森の傘はないが、もう十分濡れているのでそのままの姿でいく。10mも歩かないところで対岸に渡らざる得ない壁に阻まれる。「では、浸かりましょう」靴の中に水が流れ込んできた。一度入ってしまえば気楽なもの、右岸へ左岸へと渡河を繰り返し河原を追っていく。気楽とは言っても、水流は早く、水温も低い。次の一歩の場所を考えすぎると体温を奪われてしまう。中には腰まで落ち込む個所もあった。
結構長い時間河原を歩いている気がする。雨も強くなり体の発熱が消費に追いつかなくなってきて寒さが勝ってきた。いつジャケット着ようかと迷いながらも目印はケルンぐらいだろうなぁと広くなってきた河原をキョロキョロして歩く。
17:00 やっぱり。高さ30cmぐらいのケルンを広い河原の片隅に発見。かじかんだ手も草むらに入って風が消えればすぐにぬくまってきた。20分森の中を歩き車にタッチ、駐車場には僕の車だけが残っていた。