時間を楽しむことを教えてくれるゴートパス( Goat Pass )

同行してくれた Mr. Hedge。日  程 2001.11.07 〜 08
メンバー HEDGE、亀山(報告)
概  略 国道73号線、アーサーズパスよりミンガー川を遡上、ゴートパス・ハットまでの往復  ー地図は後日ー

11月6日

ここはクライストチャーチの丘の上、街の喧騒はここには無い。いつもの寝袋生活になんら不満は持っていないのだが体はその違いを確かに感じているのだろう、ベットの中でできる限り四肢を離して深く眠っていた。スキー仲間として面識を持たせてもらった Hedge のお宅にお世話になっている。なんと呼ぶかは想像してもらいたいが日本人である。今月末に出産を控え、大きくなったおなかで車から降りてくる奥様がいる。
挨拶に来たつもりが歩きに行こうという話が持ちあがる。来週は生まれてくる赤ちゃんのことを考えると家を空けるわけにはいかない。だから今週、今から行こうという。奥様の了解も得、お昼過ぎからアーサーズパスを目指す。途中で「アスパラガス」の看板をみつけ道端に置いてあるクーラーボックスの脇に車をとめる。ボックスの中にはプチッと張りのあるアスパラガスと料金箱が入っている。自己申告制の無人販売所だ。もちろん今夜の食材に追加エントリーとなる。
アーサーズパスのDOC(
Department of Conservation :政府環境局?の出先機関のようなもので国立公園や森林公園などを管理している。)で情報収集をする。当初予定していたコースはどれも山小屋まで4〜5時間でコース難度もほぼ同じ、ということなのでもし条件が良ければ長いコースを歩くことのできるゴートパス・ハット( Goat Pass Hut )のあるルートを選び、町から5kmほど南下した駐車場に車を停める。まだ陽は高い。

16:40 駐車場を後にする。線路をまたぐとすぐに渡河が待っている。ビーリー川( Bealey River )は前回のオティラ川と峠を挟んでそれぞれ太平洋とタズマン海に流れ込む川だが、ずっとやさしい面持ちで迎えてくれた。膝上まで浸かるが流れはやさしく底の岩まではっきり見える。渡った場所は幅500m以上はある大きな河原の広がる出合で僕らはミンガー川( Mingha River )の上流を目指していく。この奥で合流するエドワード川( Edwards River )の上流にあるエドワード・ハットへのルートを示す看板を確認し、右岸を歩いていく。河原の中を好きなように蛇行する流れは地図を過去のものにしていた。流れに阻まれたら対岸に渡るという単純な解決策で左岸から始まる森へのルートサインを探しながら上っていく。1時間歩くと左右それぞれの沢からミンガー川のほぼ同じ場所に流れ込む出合に着く。上から見たら綺麗な十字路になっているはずだ。

5枚の花びらが3枚と2枚に分かれているように見えます。17:56 森へと誘うサインマークに導かれ始める。森に入ると整備されたトラックが続き地図にもはっきりとコースがついている。30分歩くと森がひらけ小さな台地の上に立った。Dudley Knob だろうか。この頃になると所々トラックには木道がひかれ、まるで遊歩道のようだ。ペースを落として森の中にいる時間をよりいっそう楽しむ。マウントクックで数輪だけみたユーリシアが群れになっている。ただ、このコース上でユーリシアを見られたのはこのわずか1u程度の空間だけだった。

19:50 ミンガー・ビバーク( Mingha Bivouac )が目の前に現れる。8時過ぎが日没のことを考えると丁度いい時間ではないだろうか。途中ですれ違ったハイカーによればゴートパス・ハットは30人以上の宿泊者がいるという。ハットの定員は20人しかないのに。。。。でもここは Hedge と僕の二人だけだ。物置サイズのビバークには2段ベットが一つだけある。さらに焚き火の跡も残っている。「今夜は長くなりますよ」、おもわず Hedge の背中に投げかけていた。

この豪華設備!宿泊費は$0です。ビールを川という名の冷蔵庫に冷やし、軍手をつけて薪を集める。先週は雨続きだったのだろう、かなり水を含んでいて重くなっている。太さの揃った枝を3本みつけ焚き火の上に三脚を組む。カギ手も集めてきた薪の中から選抜する。今日のご飯はおいしく炊けるに違いない。
自分が一人のときにやっているであろうことを順にこなしているだけなのだが、Hedge はかなり興味を示して楽しんでくれている。今まで繰り返してきたバイク野宿も無駄にはなっていなかったということか。
数キロ離れたところにいるであろう
お隣さんに気を使いつつ、降り注ぐ星を全身で味わう。気温は下がってきているがもう少しこの空間にいたい。今夜は乾杯のビールに続き、味わうための2本目のビールまである。火が細くなりがちな焚き火をいじりながら山の夜を楽しんでいた。

11月7日

7:00 自然に目が覚めるまで寝ていた。外に置いてあった水筒の表面には薄く氷が張り、振るとシャカシャカと音がする。氷点下まで下がったのか。コーヒーのお湯を沸かしながら焚き火遊びをするが火は太い木に達しなかった。それらはスポンジのように水をたっぷりと内に持っていて乾くまでにはかなりの時間がいるようだ。昨日一晩中燃やそうとした湿った木はそのまま焚き火の脇を固めていた、残念。

マウントテンプル。自分のシュプールを描きたかった。9:00 ビバーク小屋を後にしてゴートパスまで足を伸ばす。左に深く険しい谷が全容をあらわし、その上部にはまだ雪の残る壁が立ちはだかる。それはマウントテンプル( Mount Temple : 1913m )の東斜面で山頂左肩のテンプルコル( Temple Col )の西側はテンプルベイスン・スキー場の斜面だ。つまり9月初旬にあのコルから見えているこちら側、ミンガーバレー側に滑りだし手術した膝をまたはずしてしまった斜面、それが今目の前に見えている。いまだ頭が隠れるほどの雪が残っていて歩くことはできないが夏になって雪が消えるとテンプルコルからゴートパスに抜けることができるという。

10:12 パスを越えて一段低くなったところにゴートパス・ハットが隠れていた。昨晩定員オーバーの宿泊客で賑やかであったであろうハットだが、今は皆出発した後で誰もいない。あくまで Hedge と二人だけで今この瞬間の光景を堪能できる。ハット正面に構えるマウント・フランクリン( Mt. Franklin : 2145m )を主峰とする峰は谷に雪を抱き、真上から照らす太陽の光はその白さに輝きを付け加えてくれている。贅沢な時間を過ごしている、そのことをはっきりと実感できている。

12:00 横になった体を立たせることにした。方角は西海岸方面に降りずに往路を戻ることにする。それは前回のオティラ川の流れに対する恐怖心からの選択だった。もしも西側のコースをとる場合、河原をずっと下りていくことになる。地図にはルートはない、つまり整備されているわけではないということだ。当然何度となく渡河をするだろう。下流にいくに従いいくつもの沢水を集め川は水かさを増していく。下りていって遂に渡れなくなったとき、どうなるか。数週間後にパパになる友といくべきコースではない、と。
歩いているトラックは同じだが目に入る光景はまったく違い飽きるようなことはまったくない。安心感だけが増えてくれたようだ。空はまだ透き通る青のままだ。

13:20 お土産の沢水を汲んだりと寄り道を繰り返しながらミンガー・ビバークに戻ってきた。考えてみると川は多くの沢水の集合体、ということはそれぞれの沢でもし味が違ってもブレンドされるわけだ。 それぞれの沢水で味比べはどうだろう、にこやかな Hedge の口から洩れていた。

14:30 Dudley knob まで戻ってきた。いくつも現れる木道の上を往路よりもさらにゆっくり歩いてみる。わずかな下り傾斜とあいまって森の中を歩くことが楽しくてしようがない。見晴らしの利くところでもう一度長い休憩をとる。いままで背中が向いていた西海岸の方をみると雲が沸きあがってきている。この青空も長続きしないのか、それでも僕らが山にいる間は大丈夫だろう。

慣れたもの、この国では靴は濡らしてから履くものです。ん?15:15 森から出て河原を歩き始める。左岸を下りていくと4輪の轍が始まり歩きやすい。渡河も一度通過した道なので余裕がある。深みを見つけて写真を撮りながら歩を進める。駐車場についたのは16時43分、 まさに24時間の遊びほうけであった。

無事にクライストチャーチに戻り、奥様手作りの餃子に迎えられた時間は決して忘れてはいけない思い出の一つになっている。