雨だからこそ出逢える滝の園 ミルフォード・サウンド(
Milford Sound Track )11月14日
スタート地テ・アナウに昨日の夕方についた。朝、最終パッキングをしながらDOCにチケットを受け取りにいく。今回は3人、Kyoko と Dai-chan でパーティを組む。
9:30 テ・アナウYHA(ユースホステル)を出発、テ・アナウ・ドウンズ(
Te
Anau Downs )に向かう。20分のドライブで到着し船の出発まで散歩をしながら準備運動、心の準備をする。
10:30 驚いたことに定刻にボートは桟橋を離れた。ときどきスピードを落として解説をしてくれるのだが低い声の船長の話はほとんど聞き取ることができなかった。見まわすと日本人グループは僕らだけだ。あとは午後に一便がある。1時間のクルーズでテ・アナウ湖を横断して小さな桟橋に着岸した。
11:40 歩き始めるが雲は低い。ともあれこの旅は「のんびり、ゆっくり」をスローガンにして原生林を楽しみたい。いきなりシダの茂る森が始まる。種類はマウント・クックのそれと似ていてブラウン・スケール・ファーン、ボタン・ファーン、クラウン・ファーンと一通り揃っている。30分歩くと森がひらけガイドツアーが利用するグレード・ハウス(
Grade
House )が現れ、その先に吊橋が見えてくる。森の傘がなくなるとはっきり感じる程度の雨が降っていてザックパックを装着した。コースはクリントン川(
Clinton
River )に沿って上がっていく。緑色の川の流れは白瀬が見えるもののゆったりとしている。本を片手にコショウの味がするペッパー・トゥリーを味見したり、マオリ人が整腸剤として利用していたモンテイン・トウタラを同定したりしながら雨が強くなりつつある森の道をゆっくり進む。
13:15 初日の宿泊小屋クリントン・ハット(
Clinton
Hut )に着く。このコースは全ての宿泊地が指定されていて調子が良かろうが、天気が良かろうが先に進んだり延泊したりすることは許されない。初日は2時間しか歩かないことを知っていた僕らは生の鶏肉を生のおろし生姜でソテーして豪華な夕食を楽しんだ。
11月15日
3時にトイレに起きたとき山に囲まれた空の全てが星で埋められていて期待のこもった朝を迎える。ずばり快晴、朝食がおいしい。
9:05 最後の客としてハットを出発。人のいなくなった1泊35ドルの山小屋を改めて見まわし、太陽の当たる山肌を見ながら歩き出す。やっぱり太陽がいる山の方が好きだ。基本的に川沿いを歩いていくのでいくつも河原に下りる枝道がある。
10:55 川に流れ込む沢に通じる道があり休憩。花が咲いている枝が目の前にぶら下がっていて本を開くが名前は同定できなかった。
12:15 マッキノン・パスを遠くに見ることのできる平原に出る。日は高くあがり日陰を見つけてランチとする。パンにバター、蜂蜜そしてマーマイトを塗っただけだが十分においしい。サンドフライがひつようにまとわりついてくるのでのんびりはお預けにして12:50に退散する。30分歩くと雰囲気のいい河原が見えてきたので枝道を見つけて河原に下りる。水の流れは穏やかで深さも手ごろだ。Dai‐chan
が服を脱ぎ捨てて飛び込む。
kyoko
は足だけ入るつもりで川に歩を進めたが見事にすべり全身が水の中に没していった。一度濡れてしまえば遊べてしまうことは誰もが経験のあることだと思う。30分の水遊びをして再びトラックに戻る。
14:30 道は登りはじめるがトゥリー・フューシャの天然アーチの中を歩いていく。日本で栽培していたエンゼル・イヤリングにとても似ている。忽然とバス・ストップと書かれたシェルターのような建物の前に立つ。どんなバスが来るのか分からないがザックをおろして一休み。もちろんバスは走ってこなかった。
深い森が一段落すると氷河で削られた山肌が見えてくる。ほぼ垂直に近い岸壁が両脇をかため、いく筋もの滝が落ちている。教科書的にはU字谷の中を歩いていることになる。滝はオーバーハングした壁を伝い下りられず空中に飛び出し飛沫を挙げている。おおむね1時間に一回の割で休憩を取りながら歩を進め、16:36 2泊目の指定山小屋ミンタロ・ハット( Mintaro Hut )についた。小屋のテラスの正面には川を挟んで絶壁がそそりたち、わずかな緑の中に白い斑点が見える。レンジャーから、あれはすべて花の白であれほど大量に咲いているのは今年が初めてだと説明があった。
11月16日
昨日の天気予報から今日は雨、次第に強くなると言われていたので朝一に期待した。しかし6時に起きたときにはすでに雨がぱらつきだしていた。
8:35 雨の中出発。停滞という選択をできないのがグレイト・ウォ‐クの残念なところだ。しかも今日は峠越え。晴れているときに歩きたいと誰もが思うところだろう。しばらく森の中を歩くので雨具はまだいらない。昨晩説明のあったお花畑の標高に近づいている。それは一種類ではなくウーリシア、マウントクック・リリー、ラージ・マウンテン・デイジーなどの混成チームだ。
10:20 マッキノン・パス(
Mackinnon Pass : 1073m )の道標にたどり着く。峠の手前から森林限界を越え、雨が直接僕らを濡らしていた。風も強くなり気温も下がってきている。手がかじかみだし山頂小屋で暖を取ろうと早々に移動するが気づけば吹きつける風の中身はあられになっていた。
10:45 山頂小屋に逃げ込むように入る。今回の行程を共にする仲間達も多くが歩をとめていた。バーナーをつけ暖を取りながらランチタイムにする。待っても天気の回復は望めそうにない。むしろ小屋に吹きつける風は強くなっている。
11:45 真っ白なガスの中、峠を越えてタズマン海側へ動き出す。マウントバルーン( Mt. Balloon )の腹を横切りながら沢に下りていく。のちにミルフォード・サウンドへ流れ込むアーサー・リバー( Arthur River )の始まりだ。切り立った崖からは幾筋もの滝が生まれていてトラックも水の通り道になっている。依然多くの花達が咲いているもののゆっくり愛でていられない。雨はかなり真剣に降ってきている。体温が下がりきらない程度の短い休憩を取りながらハットを目指す。キーウィと同じように飛べない鳥ウィカ( Weka )が前から歩いてくる。僕らが止まると僕らの部分だけ森に入って迂回し再びトラックに出てきて僕らを通り越していった。彼らにとってもトラックの方が歩きやすいのだろうか。途中にサザーランド・フォールス( Sutherland Falls )への分岐があったが、雨の強さ、トラックがほぼ満遍なく水没し泥道に変わりつつあったことから立ち寄りは見送った。即席の滝の数は想像を越えている。今日だけで100以上の滝を見たのではないだろうか。後で聞いた話だが4日間の行程すべてが晴れていた幸運な(?)トランパーは指折り数えられるだけの滝を見ただけだったという。
15:32 ダンプリン・ハット( Dumpling Hut )に到着。Kyoko, Dai-chan ともに靴の中まで雨で満たされてしまっていた。僕はゲートルが活躍してくれて靴の中は免れたが、ザックカバーで覆ったはずのザックの中に水たまりが出来ていた。夕食の間も強い雨は続く。食堂に行くだけでもレインコートが必要なほどだ。ストーブに火が入り、ストーブの上に設けられたマス目状のハンガーに皆の干しものが吊るされた。雨はみぞれに変わっている。
11月17日
6時に起きると青空に変わっている。最終日は気持ち良く歩きたい。ハットを取り囲む山々は上部を白くしている。
8:00 ハットを後にする。最終日はアーサー川に沿って下っていく。所々頭ほどの岩が並べられたセクションに出くわすものの総じて歩きやすいトラックが続く。2時間でベルロックと名づけられた彫りぬかれた大岩が逆さまになって鐘のようになった奇石を過ぎる。
11:45 ゴールであるサンドフライ・ポイント(
Sandfly Point )まで1時間45分と書かれた看板のあるグランツ・ゲート(
Grants
Gate )に着く。これで最後のアトラクションに乗り遅れることはない。のんびりランチとする。ここでまた
Dai-chan
が川遊びに興じる。今回はつり橋からの飛び込みを披露する。1時間以上休憩し時間調整をしながらゴールを目指す。なぜなら早く到着しすぎてはサンドフライの餌食になってしまうからだ。しかし、あと20分と思って歩き出すと5分もしないでサンドフライ・ポイントの小屋に着いてしまった。14時前だった。
14:30 道路の通じるミルフォード・サウンド・ローンチ( milford Sound Launch )に向かってシーカヤックをこぎだす。通常の移動手段としてはボートを使うのだが、明日1日カヤックツアーをするつもりなので、その練習としてこちらを選んだ。水は冷たくなく水面まで原生林が迫っている。見上げれば雪化粧をした山、いやむしろ氷河に削られた岩の塊が迫ってくる。オールを水面から挙げて水面の高さからの景色を楽しんだ。