11月20日
予想的中!頭の上には青い空が広がっている。昨日登り始めようとしたが駐車場の近くに来ると晴れてはいるものの山々はガスに包まれてしまった。ここはテ・アナウからミルフォードサウンドへ向かう94号線の途中にあるザ・デバイド(
The
Devide : いくつかあるサザンアルプスを横断する道で最も標高の低い峠、標高532m
)。ミルフォードサウンドトラックに次いで有名なルートバーン・トラック(
Routeburn
track )のスタート地点である。ただし資金繰りに苦しむ僕は高額な山小屋使用量を必要とするグレートウォーク(
Great
Walk : GW )は遠慮してそこから分岐するトラックを目指す。それでも入り口にはキーサミット(
Key
Summit )と呼ばれる好展望地があるのでガスのない山を待っていたのだ。
9:18 駐車場出発、30分でキーサミットへ続く分岐に着く。荷物を看板の後ろに置いて空荷であがる。10分とかからずにキーサミット(
919m
)に立つ。この時間はまだ僕しかいない。ここから周回の散策路が伸びているので標識にしたがって木道を進む。気温が上がる前の空気の中ぐるっと山に囲まれた。形のいい山を見つけた、その名もマウント・ピラミッド(
Mt.Pyramid
: 7630ft )。散策路から枝道が始まっていたので寄り道する。看板にはリッジトラック(
Ridge
track )と書かれている。ほどなくしてマウント・リトル(
Mount
Lyttle : 1896m )の西斜面にあるマリアン湖(
Lake
Marian )が見えてくる。ここでトラックは終わっているのだが踏み後はさらに奥へ続いている。看板にはこの先にマーカーなし、とある。それでもこれだけはっきりした跡が残っているのでさらにリッジトラックを進む。ちょっと寄り道しすぎたかなぁ、と思った頃小ピークにたどり着き、これから僕が歩こうとしているグリーンストーン川の渓谷が現れた。眼下にはマッケラー湖(
Lake
McKellar )が見える。湖の上流には湖と同じくらいの広さの湿地帯があることが分かる。しばらくその景色を一人占めする時間を過ごす。ザックの場所に戻ったのは2時間後だった。
12:00 正式に歩き出す。GWの山小屋ホウデンハット(
Howden Hut )からコースは分岐する。山の斜面に作られた一本道はゆるい登り下りを繰り返しながら先に続く。ビーチストロベリーがころころと落ちているので上に張りだしたシルバービーチの枝を観察する。まだ枝に着いている、つまり生きているビーチストロベリーを見たことがなかったからだ。あった、あった。どうやら太い幹に寄生するわけでなく、細く若い枝にいくつも玉が着いている。やっぱり万物は若いものを好むのか・・・・・。
13:03 ケイプレス・トラック(
Caples
track )との分岐を過ぎるとさっき上から眺めたマッケラー湖の西岸を南下する。足元まで湖面が近づくと底に沈む木々まではっきり見える。
13:55 フィヨルドランド国立公園とワカティプ保護林?(
Wakatipu
Conservation Forest )の境界となる小さな沢を渡る。マッケラー小屋はすぐそこだ。当初はここに泊まろうかと思っていたがまだ2時。この先の山小屋まで6時間かかると地図には書いてある。・・・・・・先に進むことにした。
標高差があるわけでなく淡々とグリーンストーン川の右岸を進むが湿地帯と化した所がいくつもあり気をつけないと靴が見えなくなってしまう。DOCのスタッフと会う。トラックを横切る沢の流れをいじってトラックに流れ込まないようにしていた。一通り会話が済んで通りすぎようとすると山小屋チケットのチェックが入った。「移動事務所さ」ブルース(
Mr.Bruce )はザックから手帳を取り出した。確認事項は名前、国籍、コース取りといたって簡単だ。1時間に1回の割で休憩を取りながら進んでいくが16時を過ぎると疲れが表に出て感じられるようになってきた。テ・アナウのユースホステスで作ったヒヨコ豆の煮豆を食べ始める。17時を過ぎると建物が見えてきた。しかし2棟ある。予想どおり手前のものはプライベートハットで僕の泊まれるDOC管轄の小屋はさらに30分の看板が出ていた。
18:28 あの看板から山の中の登り道が続きようやくミッドグリーンストーン小屋(
Mid
Greenstone Hut )に着いた。残念ながら疲れていないと言うとウソになる。先客はアメリカからのカップルで調味料一式、フライフィッシング道具一式と何でも担ぎ上げてきている。少し遅れて途中でパスした香港からの女性が到着し4人で過ごす夜となった。
11月21日
9:20 アメリカからのカップルはフライをふってから行くというので先に出発する。香港レディはすでに出発していた。広い河原は気持ちがいい。山のバックは「青」だけだ。森に入ると直径5cm以下の山ぶな(
mountain
beech )の若木が続く。20分でスリーバーン小屋(
Sly
Burn hut )への分岐が来る。とりあえずチェックに行く。かまどが外にあるもののいたって綺麗な小屋だ。
10:45 分岐に戻り先に進む。橋を一つ二つと越えるがつり橋ではなく頑丈な木の橋だ。まわりは銀ぶな(
silver
beech )に変わっている。広い草原地帯でマーカーを見落としてコースを外れてしまったが見とおしが利くのでより川沿いにたつマーカーが目に入った。
13:13 グリーンストーントラックを終了する。このまま直進すれば駐車場に着く。僕はそこからケイプレス川に沿うトラックに進む。良く見ればさっきまで見ていた山ぶなと銀ぶながかわるがわる現れる。植生が完全に分かれているわけではないということか。今度はケイプレストラックのDOCスタッフと会い、ブルースに聞かれたことと同じ質問を受ける。ディーン(
Mr.Deane
)いわく、今のところこの先の山小屋に宿泊の客はいないはずだと言っていた。さらにこの先数日は晴れが続きそうだとうれしい情報をもらう。今日は15時の段階で疲れが見えだしてきた。サンドフライにたかられる。今までで一番の数じゃないだろうか。
15:10 ミッド・ケイプレス小屋(
Mid
Caples hut )に着く。中には先客がいた。昨日から連泊してのんびりしているという。まだ太陽は暑い。次のハットまで行ってしまおう。牧草地のような緑の河岸段丘の上を歩くがひどく水分を奪われる。木陰に隠れて休憩をしながら上流に向かっていく。定刻より30分遅れの17:15 アッパー・ケイプレス小屋(
Upper
Caples hut )に到着。ここにも先客トニーがいた。荷物を中に入れるより先にタオルとビールをもって川に行きケイプレス川に入る。もちろん全部脱いでいる。歩いている最中ずっと考えていたこと「小屋と川の距離は近い、ぜったい水浴びだっ。そして冷たいビールしかないっ」30秒入っていられなかったと思う。足は冷たさでピリピリしている。すぐにサンドフライの塊がやってきた。服を着るのが早いか奴らの攻撃が早いか、なにせ敵は数で勝負してくる。ともあれ素肌を隠しビールを手にする。久々の“腰に手をあて”ポーズでグビッとできた。
トニーはイギリスからの旅行者でちかじかダスキー・トラック(
Dusky
track )の単独行をするという。このトラックは行程8日、泥ドロのコースで有名でパンフレットには「熟練したグループで行くこと」と書かれているため僕が二の足を踏んでいるトラックだ。
今晩は二人だけかと荷物を広げてしまっていたが20時を過ぎて女性二人組みが到着した。ドイツ語が小屋に流れる。
11月22日
7時にトニーが出発していく音を聞きながら2度寝をしていた。もう欲張って歩くことはない。今回ラーメンを朝食に取りいれてみたがカンスイが気になるものの水分、塩分そして速攻型燃料が摂れるしいいかもしれない。
10:00 ドイツ人ペアを送り出し、最後の小屋チェックをして出発。川幅は狭くなり登り始める。目の高さにセロリパインが続く、いつもの森と少し違った場所だ。2時間経つ頃ガレ場の急登が始まった。勢いで上っていくが結構続く。ちょっと弱気になりだした頃トラックは傾斜を緩めてくれた。広い台地にでてしばらく木道をたどると峠の標識が出てきた。マッケラーサドル(
McKellar
Saddle : 945m )は低木の草原で見晴らしは利くが山にはガスがかかっていて頂きを見ることは出来ない。12:45 だった。そして一気に下りが始まった。かなり荒れたガレ場だ。落差が大きく木々の根が縦横に張っているので滑りそうで怖い。雨が落ちていないから良いものの雨降りのときは避けたい下りだ。地図上で1kmほどの直線で標高300m落ちる。マッケラー湖の水面が近づいていることは分かるがハードな下りが続く。40分ほどでやっと湿地帯の標高まで下りてきた。ズブズブと靴が沈むがこっちの方がずっといい。今日の部分はサドル周辺で景色がひらけるもののほとんど森の中なので敢えて晴天を選ぶ必要はないと思う。
13:45 往路で立ち止まったグリーンストーンとケイプレスの分岐点に着く。これでめでたく一周完了だ。食料がまだ残っているのでのんびりすることにして往路で通過したマッケラー小屋に向かう。
14:48 マッケラー小屋に到着。一番のりだ。昨日の快楽をもう一度、とビールとタオルをもって河原に下りる。ここにもおあつらえ向きの流れがあり水浴びをする。昨日よりもサンドフライの数は少ない。風が吹いているからだろうか。でもビールを手に取る頃には奴らに気づかれ取り巻かれてしまった。今夜の小屋は賑やかだ。ドイツからの夫婦、昨晩のペア、カップルそしてオーストラリアからのカップル。んー、日本語劣勢だ。
11月23日
周回コースは終了した。なにも慌てることはない。ストーブに石炭をたして部屋を暖める。震えるほどではないがひんやりと朝の空気になっている。みんなを順に送り出していき最後はオーストリア組と地図を肴にトランピング話に夢中になる。多くの人がリーズ・ダートトラックを絶賛している。僕も行きたいと思っているところだ。ただし条件がつく。リーズサドルの部分は晴れていないと価値が半減する、ということだ。
10:52 彼らはまだ干し物をしているので出発させてもらう。今日はすでに歩いているところ。背中の荷物も軽くなっていてお散歩気分だ。45分で昨日歩いたケイプレストラックとの分岐につく。ホウデンハットについたのは更に40分後だった。空が真っ青になったらもう一度キーサミットに行こうかと考えながら近づいていったが初日ほどの快晴にはついにならなかったのでそのままザ・デバイドまで下りていった。13:10 いつものように車にタッチして終了した。