1月13日
15:20 車に再会できた。中身もそのままだった。まず始めにすることは“靴を脱いでビールを飲む”
と書いたのはフルヌイ温泉の最後、そして今食料を補充している。このままセントジェームスウォークウェイ(
St
James Walkway )に入ってしまおうと思う。
17:00 セントジェームスウォークウェイの南側の入り口に車を置いて荷を担ぎ直して国道に出る。手には「10Min」と書いた段ボールを持っている。ヒッチハイクスタートだ。15分がんばってダメなら北側の入口に車で移動しようと思っていた。
17:09 交通量は決して多くはないが5台目の車が速度を落としてくれた。旅人3人組、名前は覚えられなかったがスイス、イスラエルそしてドイツからの混成チームだった。
17:30 歩き始める。入山記録帳(
intension
book )には今日の日付でマミエ殿が入っている。自分の欄を埋めながら「入山目的」には「Chasing(追っかけ)」と書いていた。
17:55 カンニバル・ゴルジュ橋(
Cannnibal
Gorge bridge )を越える。ウォークウェイの名を持っているのでコース整備はすこぶる良い。コースはフルヌイでも見たレッドビーチの落ち葉で覆われ石の凸凹も少ない。名前によるランクの差を確かに感じる。
18:20 クライストチャーチから歩きに来た両親そして息子さんの3人家族と10分以上話してしまう。コース上でマミエ殿と会っていることも分かった。
マルイア川( Right
Branch Maruia River )に沿って上がっていくがそこに流れ込む沢をいくつも渡る。高巻きも足にやさしい勾配で、今までのトラックならもう一回グンッと上がるところが平坦になっている。
19:20 一度広い河原に出る。マルイア川の流れは少し距離を置いている。
19:48 もう一度草原に出て視界がひらけると正面にカンニバルゴルジュハット(
Cannibal
Gorge Hut )が現れた。窓を見ると3階建てのようだ。上に高い山小屋なんて初めてだ。でもちょっと間隔が狭すぎるようにも思える。中は広く3段の窓は3段ベットの明かり窓だった。ストーブ用に石炭が置いてある。かなり贅沢な時間を過ごせるのではないか。しかしそこにマミエ殿の姿はなくビジターブックにはもう一つ先のハットを目指すと書いてある。ここには僕しか居ないしこの時間から人が増えるとも思えない。時刻も8時だ。足もさすがに疲れをあらわしている。ここに泊まったらのんびり出来るが・・・ここまで来たら行ってしまおう、と後を追うことにした。ちょっと彼女の驚き顔を期待して。
21:00 エイダパスハット(
Ada
Pass Hut )が見えてくる。煙突から煙も出ている。あったかさそうだ。ベランダには2人の白人カップルがトランプをしてアフターディナーを過ごしている。ただなんだか沢山の人が居る気配がする。ベランダの上が見えるところまで来たときその予感が的中していることを確認した。扉の周りにはいくつものトレッキングシューズが裏返しになって干してある。
中に入ると既に就寝時間になっているではないか!暗くなっているベットに向かってマミエ殿を呼んでみる。とイモムシのような寝袋の一つがゴソゴソ動き出し目をこすっている。追いつきました。
勢い良く燃えているストーブを使ってご飯を炊き夕飯をとるが足は“歩きすぎ”のサインをバンバン出している。足の皮がなくなってしまったように足の裏がすごく過敏になっていて歩くたびに痛みが走る。
天気は昨日に引き続き「良くもなく悪くもなく」が続いている。食料は余分にあるので休養日にした。足はまだまだ新鮮な痺れと痛みが消えていない。ハットで過ごすオフ日はとても贅沢な時間だ。取ろう取ろうといつも思っているのに先を急いでしまう。でも今日は足のおかげでオフの決心が出来た。この原稿を書いているものもこのハットでの時間だ。
1月15日
10:30 2泊したハットをきれいにして出発する。足の疲れは完全復帰にはまだ遠いが一日分を歩くのは問題ない。15分もしないで峠(
Ada
Pass: 998m )を越える。森の中、木々に囲まれ視界は開けない。ここからエイダ川(
Ada
River )が始まり川に沿ってゆっくり下っていく。
14:10 北からクリストファー川(
Christopher
River )が合流し、しばらく進むとエイダキュラーズハット(
Ada
Cullers Hut )が草原の広がる河原に建っていた。このハットはもちろん泊まることは出来るが歴史建造物として残っているという感じでコース中の立ち寄り処となっている。そこから見えるスペンサー山塊(
Spenser
Mountains )は今だ残雪を抱き末端から解水が滝になって流れ落ちていくのがここからでも分かる。
15:30 根の張りそうなお尻を持ち上げ1km先の現役のハットを目指す。15分でクリストファーハット( Christopher Hut )についた。先客はなく僕ら二人で20人収容のハットを使えると喜んだが、まだ荷物も出し終わる前に3人組みの姿が近づいてきた。お母さんと娘、娘の友人の女性3人組で、この後ゴールまで同じ宿を利用することになった。
1月16日
10:10 3人を送り出し、掃除を完了させて出発。進む方向には青空がある。エイダ川はワイアウ川(
Waiau
River )に合流しコースはその先でワイアウ川に合流するヘンリー川(
Henry
River )に沿って上がっていく。今日のコースはほとんど森の中に入らず日当たりの良い草原の中を歩いていくので直射日光だったら水分消費が激しかっただろう。それでもいつもよりも間隔を狭くして給水休憩をとる。
13:45 吊り橋を渡りヘンリー川の右岸に移動する。30分ほど進むと河岸段丘だろうか一段高く見晴らしの利く台地がありとろけてみる。
15:20 1時間以上景色を楽しんだので宿に向かう。今度はヘンリー川に合流するアン川(
Anne
River )に沿っていく。といってもコースは草原を進む感じだ。
15:48 アンハット(
Anne
Huts )を見るよりも先にその庭に停まっている車の方に目がいった。DOCのトラックがハットまで来ていた。車でもこれる場所(もちろん4駆トラックだが)というがっかり感は否めないがそれだけ安全が守られているトラックということでもある。どうやら芝刈をしてくれていた。DOCスタッフと話しをする。若い青年は4ヶ月DOCスタッフとして働いて大学に戻るという。薪割りのときの薪の筋の読み、を伝授してもらう。
この夜トイレに3時頃起きると久々に空を埋める星に出合えた。冬にメスベンで見ていたのと同じように太い天の川が空を横断していた。
1月17日
9:45 写真を取って出発。朝方はこれから向かうアンサドル(
Anne
Saddle: 1136m )の空は抜けていたが雲がかかり始めてしまった。
10:27 吊り橋を渡る。アン川を左に見ながら上っていく。この川に沿って登りつめたところがアンサドルだ。顕著なキア沢(
Kia
Stream )を越えたところで一休み。次第にアン川は流れをすぼめていき一本支流を渡る毎に「小川」に近づいていく。サドルに近づくと田んぼの脇を流れる水路のような流れになってコースから離れていき、一滴の始まりは森に吸い込まれていた。
12:00 アンサドルに着く。地図には好展望マークがついていたがアダパス同様森の中の最高点で景色は開けない。20分休んで下りに歩を向ける。コースはこぶし大の石がひかれたジャリ道で足首を捻らないように下りていく。
12:38 川の流れる高さまで下りてきた。これから伴走するのはボイル川(
Boyle
River )でゴールまでこの川に沿って下りていく。30分ほど歩いたところで草原の中に一本、葉の茂る立木があり休めとばかりに影を作っていたので遠慮せずお世話になる。その後1時間歩くと一旦森に入るがすぐにまた日の当たる河原に追いだされてしまった。
14:30 増水時迂回路の方角にロケビーハット(
Rokeby
Hut )があった。無料のハットなので快適に泊まれる設備ではないがハットの中にあったベンチを外に出して対岸のリブレット山脈(
Libretto
Range )を眺めながら休憩する。ただしサンドフライの密度が濃く長居は出来なかった。
ロケビーハットから1時間でボイルフラッツハット( Boyle
Flats Hut )に到着。どのハットも似たようなつくりだがこのハットには勇水があり庭にはテーブルがある。ただし薪の在庫がなかったので森から運び出して薪割り労働に夕方の時間を使う。庭には牛もくつろぎに来ていた。
1月18日
出来る限りのんびりしてハットを後にする。最終日はボイル川に沿って駐車場まで下りていくだけだ。しかしこれが長かった。何かいい表現はないかと考えながら歩いていたが“無駄に長い”というのはどうだろうか。小一時間で吊り橋のかかるところに着く。ここを渡らずに直進してハットの見学に行く。
11:55 マグダーレンハット(
Magdalen
Hut )について日光浴をする。最終日まで天気の大きな崩れはなかった。マミエ殿の最後の非常食のラーメン、僕のチーズのかけらを食べてランチタイムを過ごす。このハットは水タンクは無いがストーブではなく焚き火をハットの中に組めるようになっている。
13:00 ラストランを始める。15分で先ほど通過した吊り橋に戻り本線を行く。次の吊り橋を渡ったのは15:40 だった。この間が“無駄に”長い部分だった。時々広い河原に出ると山々が迫ってくるがトラックは単調で森の中を続いていく。こんなときは上り下りも悪いものではないと思ってしまう。
16:00 ブナ森からマヌカの森に変わり標高が低くなってきたことを実感する。そして車道にでて別荘地のようなボイルビレッジ(
Boyle
Village )を通りすぎると車に再会できた。
ここから車で15分ほどの距離にマルイア温泉がある。日本式露天風呂そして男女別大浴場、ここ数日の垢を十分ふやけさせてから体を2回も洗ってしまった。