快速巡航、温泉付き(北海道表大雪 旭岳ー黒岳周遊)

日  程 2004.9.26 - 9.27
概  略 何度も足を運んでいる北海道、なのに大雪は歩いたことがありません。一度は歩いておこうと北海道最高峰の旭岳からお鉢を巡って黒岳へ。自分一人で稜線独占。帰りは中岳温泉に立ち寄り、シャベルを使って全身浴を敢行です。

9月26日                                                                                                    地図(練習中です)はここをクリック

低気圧を一つやり過ごし、再び北海道は高気圧に覆われてくれた。一度も歩いていないのは話題に不足あり、と旭岳に向かう。ロープウェイの駐車場は行列が出来ている。400M下の白雲荘横の駐車場にとめて坂道を登り返す。ロープウェイは遠慮して山麓駅左側の登山道を探し、入り口の入山届に記入する。宿泊山行のパーティはいないようだ。10時20分、木道を歩きはじめた。

姿見の池、噴煙、旭岳、そして青空3合目の付近から見上げる斜面に紅葉が残っていたがピークは過ぎ、色のトーンが落ちてしまっている。11時半にゴンドラ山頂駅にあたる5合目に合流すると、途端に観光客の中に飲み込まれた。ツアーバッチをつけたおばさま軍団がすれ違った後に僕の背中をなめていく視線を感じる。確かに観光地に似つかわしくないザックの大きさであることは確かだ。足早に姿見の池の展望台まで上り一休み、旭岳山頂を目指す列の中に入っていく。ザックの大きさは違うが、この集団にいるとまだ気分は落ち着く。展望台周辺には背を高く伸ばせない高山植物が実をつけている。ガンコウランはブルーベリーに似た青い実だが、おいしくないのでおすすめしない。

姿見の池から山頂までは淡々と火山礫の中、ジグザグを切りながら登っていく。7合目、8合目と杭があらわれ次の杭を目指す作業となる。ただし高みから見る地獄谷の荒々しさは活動中の山のエネルギーを十分に感じとれる。上部は斜度が増し、足場も火山灰が多くなると滑ってしまい一歩の間隔が狭くなる。勾配が緩くなり丘を登るようになると山頂の指標と人の塊が見えてくる。13時、山麓駅から2時間半で上がってきた。8合目あたりまではただただ快晴だったが、あっという間にガスに隠されてしまった。時間は十分あるので黒砂糖を舐めながらガスが流れるのを待ってみた。

太陽の位置が分るほど明るくなると、北東のお鉢方面、西の地獄谷方面とスライドショーのように部分的に展望を紹介してくれる。これから向かうお鉢方面から1組2名が上がってきたがその後からは誰もこないし、誰も歩いていかない。

再び厚いガスに包まれ体温も下がってきたので、旭岳西斜面を富士山砂走りコースよろしく降下していく。右側には秋でも雪渓が残っている。この雪渓末端の先にある平地が裏旭キャンプ指定地らしいが標識などは見当たらなかった。当然テントは一つも見当たらない。標高2100Mまで降りて稜線にのると誰もいない空間が先に続いている。振り向くとガスの上がった旭岳の山頂に小さく人間の棒がいくつか見える。

写真は御鉢平展望台近くから北海岳方面を見ています。丘陵を登りきると間宮岳、お鉢巡りの周回コースに合流した。お鉢平を見下ろすが複雑な色を持つ巨大な噴火口だ。ここからは噴気などは見つけなれない。反時計回りに北海岳へ向けて稜線をたどる。旭岳の山頂が時折ガスに包まれるだけでコース上は快晴、火山活動が作り上げる彫塑を角度を変えながら堪能し北海岳に立つ。ここの分岐から北海平を進むと白雲岳へつながる。次回に残しておこう。

稜線は沢へ落ちていく。北海沢には雪渓が残り豊富な水量がある。黒岳石室に水はあるはずだが冷たい流れの枝沢がコースを横断しているので水を確保して最後の登りに向かう。赤石川はまとめられた石が飛び石状に沈められている。橋よりもずっと経済的で耐用年数も長そうだ。

黒岳石室は本日が今シーズン最後の営業日ということでたくさんの寝袋を屋根に干していた。立派なバイオトイレが母屋に並んで立っている。バイオトイレと一口に言っても様々な様式がある。そのことはいまだ手探り段階で確立されたものではないということになる。ここのバイオトイレも試験運用であり、用を足してから便器の隣に設置された固定自転車に乗り、前に20回、逆に20回、前に10回漕いで終了となる。この作業で分解層に空気を効率よく取り込み分解を促進させる。さらに太陽発電による加温により分解に利用する菌の活性を高める仕組みもある。成果はあがっているが、開発時は1日50人の利用と見積もっていたらしい。ところがシーズン中はゼロの数が違うほどの利用者がいて大行列が出来ていたという。建造したことは評価したいが見積もりの根拠はなんだったのだろう。まさかこれまでの入山者数を把握していなかったわけではなかろうに。行政の一端を見てしまったようで疑問が残る。

残念ながら夜は雲が出てしまいトムラウシでみたプラネタリウムは上映中止になってしまったが、風もなく静かな夜は快適な読書空間を提供してくれた。石室はTVクルーを含めた数人が利用していたが21時まで動かすと記載されていた発電機の音も気にならない程度であった。

9月27日

黒岳山頂から朝が始まっていきます。眼下の雲海の下が層雲峡温泉5時半にとにかく寝袋から出る。出てしまえば体は動く準備をはじめてくれる。テントのフライシートはパッキンパッキンに氷がはって固まっている。朝日を見たくなる凛とした空間になっている。外で石室のオーナーの声が聞こえる。朝の挨拶をしにいくと10分で山頂へ行ける。そしてそこからの朝日を見るためにハイシーズンは列ができるという桂月岳の話を聞く。「どうぞ行かれてください」靴を履きに戻ろうとすると「僕はこれで登っちゃうんですけど」と、自分の足をあげてサンダルを見せている。カメラはポケットに入っているので僕もサンダルで「桂月岳」と書かれた看板の横を過ぎることにした。ただ、近いだけではない。桂月とは「富士山で山の高さを知り、大雪で山の大きさを知る」と詠った詩人の名だという。むしろそちらに強く惹かれてしまった。

岩場があり足をひねらないように登ると既に朝日のショーは始まっている。黒岳から上ってくる光の球、嬉しさに満たされていく。久しくこの明かりを忘れていた。帰り道は凍っていた道が溶け出して緩くなる。ハイマツについた氷も溶け出すのでネマキ??が濡れすぎないように気をつけたほうがいい。朝食を食べてから、今度は黒岳に足を伸ばす。こちらも15分もあれば充分、まだ誰も上がってきていないと思ったらレンジャーが山頂の気象観測装置を確認していた。このあと白雲岳に向い銀泉台に抜けるそうだ。この空なら気持ちいいだろう。石室に戻ると昨日の宿泊者と話が盛り上がる。札幌近郊の方で経験に裏打ちされたかなりの情報をもっておられ多くを教えてもらう。近いうちにネパールに行く予定だそうだ。ぜひニュージーランドで土産話を聞けることを願いたい。

あまりの晴天に停滞したい気分になってしまう。テントをしっかり乾かして根の張ったお尻をあげた。緩い勾配が続く雲ノ平をペース良く進む。30分もすると御鉢平展望台を通過する。この天気であれば稜線のどこから見ても展望台だ。北海道第2位の高峰、北鎮岳に上がると旭岳の奥に3日前に山頂にいたトムラウシ山をはっきり確認できる。十勝岳の噴煙は今日もまっすぐ上に立ち昇っている。西に延びる稜線の奥には愛別岳がヌッと立ち上がり急な岩場が想像出来る。今日は旭岳方面から10人以上のハイカーが御鉢巡りに足を延ばしていてすれ違った。中岳分岐から裾合平に向けて下りだすが途中に露天風呂があるので彼らが帰ってくる前にお風呂に入ろうとペースをあげた。

浴槽の淵にロウソク発見!誰か野営しているぞ探す作業などはまったく不必要で、トラック横に湯船が作られている。ただし、噂に聞いていた通り流れ込む砂で湯船は浅く”足湯”になっている。そばには腐食してブレードが半分以下になったシャベルが立てかけられている。「浸かりたいヤツは自分で掘れというサインですね」独り言を言ってザックをおろし、温泉作業着?になるまで脱いで砂の掻き出しが始まった。沢水を引き込んだ湯温は適温だが、湯船の下からもプクプクと泡を出して湧いており油断をするとヤキを入れられる。シャベルは園芸の移植コテ二つ分ぐらいしかないので作業効率は悪く、腰の入る部分だけを掘り下げることに作戦変更する。これなら寝湯にはなるな、のところまで掘ったところで登山道を確認。降りてくるパーティはジグザグの上部で確認できるので降りてくるまでに着替える時間はありそうだ。由緒正しき日本人の入浴姿で湯に肩まで浸かり旭岳の斜面を見上げた。極楽が多すぎる気もするが、打ち止めにならないように大雪山(ヌタクカムウシュペ)の神様にお礼をする。
余談だが大雪山という名前の頂はない。九州の阿蘇山と同じように総称名である。そして地名としての登録はダイセツ(DAIせつ)であり“たいせつ”ではないそうだ。ただし利用のされ方はまちまちなので知識として押さえておけば十分だろう。地元の方の口からも“たいせつ”の声が多く聞かれた。

斜面を降りてくる2人組を確認して着替えをはじめる。入りすぎたようでのぼせている。一人で楽しませてもらったのでバトンタッチだ。地元の老夫婦で「入れたかい?あら、湯船は一つになっちゃったんだねぇ」といいながらすぐに靴を脱いで裾をまくると足湯をはじめた。聞けば以前は3つほど湯だまりがあったそうだ。さらに一人が加わり社交場に変わる。このあとに稜線で会った人たちが続けて降りくるだろう。何組もの素足が入り、会話が飛び交う湯船を想像しながら中岳温泉を後にした。

汗をかかないように下りよう。と思ったが道はアップダウンがあり汗ばんできたところで夫婦池に合流、周回コースとなった。こうなるとやはり風呂に入りたいので旭岳温泉へ登山道で下りていく。ロープウェイ代は入浴代に変更である。車に戻り、白雲荘の向かいに建つユースホステルの温泉を利用させてもらう。綺麗なユースで館内は新築の木の香りが残っているようだ。コース上で出会ったオーストラリア人とばったり、ここのユースを気に入ってくれていて一安心。もっともっと外国の若者が旅行しやすい国になれたらと思う。露天風呂もあり全身をリセットしてから次なる目的地「知床」に向けて車のハンドルを握った。